蹄病④

蹄病で多いもの。 (1)蹄底潰瘍 (2)白帯病 (3)疣状皮膚炎 この3つが多い印象。 (1)蹄底潰瘍 蹄皮のびらん性欠損と言われるようだ。 自分からすると、蹄真皮と蹄皮が本来くっついいるはずだが、それが離れてしまっている状態。 原因は蹄への過剰な負…

蹄病③

蹄病の治療は、まず農家さんに牛がびっこを引いているという往診依頼から始まる。 蹄病②で言ったように、跛行の8割は蹄によるが、2割はその他による。 例えば関節炎であったり、大腿部などの筋肉が腫れることによる筋炎、もしくは亜脱臼なども考えられるた…

蹄病②

跛行(びっこをひくこと)について教科書によると ・跛行牛の95%は乳用牛である(和牛は5%) ・症例の80%は蹄病である(関節炎など蹄以外の跛行は20%) ・蹄病の80%は後肢に起こる(前肢は20%) ・蹄病の50%は蹄角質の疾病で、50%は趾皮膚炎がほとんどを占め…

蹄病①

牛はよくびっこをひくようになる。 なぜか? 600kg以上もある体重を支える足に大きな負担がかかっているからだ。 前足よりも圧倒的に後ろ足のほうが悪くなりやすい。 治療するときは枠場に入れて牛を固定し、蹄が見えるように足を縛る。 あとは悪いところ見…

抗生剤③

③作用機序 どのようなルートで抗生剤が菌に作用するかの話。 例えば、抗生剤はなぜ人間の細胞には影響せずに菌だけに作用するのか? 人間の細胞も壊されたりしないの? ・細胞壁合成阻害薬 細胞(植物にも)には細胞壁という細胞の外側を覆う壁があります。 …

抗生剤②

②作用 作用には「殺菌的」と「静菌的」に分けられる。 殺菌的だと菌を完全に殺す。 一方、静菌的だと菌の増殖と成長を妨げるに留めるため、最終的には宿主(牛)の免疫機能によって菌は除去される。 殺菌的なものには アミノグリコシド ペニシリン セファロ…

抗生剤①

抗生物質の歴史は1928年にアレクサンダー・フレミングが世界初の抗生物質であるペニシリンを発見したことに始まる。これにより人類の健康状態は飛躍的に向上した。 抗生剤の分類として ①スペクトル ②作用 ③機序 ④動態 ⑤重要性 などがある。 ①スペクトルとは…

乳房炎③

前回は高張食塩水により毒素を外に出す話だったが、次は抗生剤と消炎剤。 大腸菌はグラム陰性菌なのでそれに効く抗生剤と、ショック状態・乳房炎の炎症を抑えるためにステロイドやNSAIDsを投与します。 抗生剤は、例えばカナマイシンというグラム陰性に効く…

乳房炎②

乳房炎。 原因は色々あるけど、やっかいなのは大腸菌によるもの。 なぜかというと大腸菌のショックにより致死率・予後不良率が他と比べてとても高いからです。 よくあるのは、乳房炎になったので乳房炎軟膏(抗生剤)を注入したら、しばらくなって立てなくな…

スターター

子牛が食べるスターターという餌について。 本来野生の牛ならミルクと草しか口にいれることはない。 スターターなんて自然にないもの食べないのに大丈夫なの? スターターとは離乳食のようなもの。 栄養価が高く、消化されやすく、1胃も発達する。 ミルクは…

お金を貯める理由

Youtuber宋さんによると、お金を貯める理由は ①教育 ②家 ③老後 の3つのためとのこと。 ①教育 もし子供が18歳になり大学にいきたいとなると、学費が必要となる。 国立ならだいたい年間50万、4年で200万。 私立文系で年間100万?、4年で400万…

FUCTFULNESS (ハンス・ロスリング著) ①

世界の情勢をありのままに書いた一冊。 正確に言うと、世界中のひとが、いかに悲観的にとらえてしまっているかを。 冒頭に世界情勢についての3択クイズ12問がある。 世界中の人々の平均正解数は2問。 チンパンジーにあてずっぽに答えてもらっても4問な…

「脳内物質仕事術」 (樺沢紫苑著) ①

精神科医、樺沢紫苑先生著。 7つの重要な脳内物質にスポットライトを当てる。 それはドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、メラトニン、アセチルコリン、エンドルフィン。 まず2つ。 1つめはドーパミン。 ドーパミンは幸福物質である…

下痢のアンケート

・下痢が起こった日齢 ・分娩時の状況 ・親牛の健康状態 ・初乳の状態 ・ハッチの位置 ・ワクチン投与の有無 ・ストレス(寒冷、暑熱、過密) ・消毒、個別飼育、敷き藁 どれくらいの日齢でいつから始まった? 便の性状(水?ねっとり?色?におい?)? 熱…

子牛の下痢②

生まれて何日目の下痢かによって、どの菌、ウイルスかなど多少推測できる。 生まれて1~3日程度(1週間以内)で下痢になったときは要注意。大腸菌が疑われるからだ。激しい水様性下痢もしくは混血の悪臭下痢、元気衰退、脱水、低体温、心拍徐脈などの症状が…

子牛の下痢①

子牛はよく下痢をする。 下痢と肺炎は子牛のダントツ2大病と言ってもいいくらいだ。 子牛の正常便の水分量は70-80%だが、下痢の時は90-95%になる。 さらに便の量は6-30倍になると言われている。 つまり大量の水分が体から出てしまっているのだ。 それにより…

子牛のへそ③

臍ヘルニアは先天性の病気で、牛では0.65-1%程度で起こるとされている。 通常ヘルニア輪(ヘルニアの穴)の直径が5㎝未満で6か月齢以下では、包帯を圧迫するなどの方法で治ることがある。 ただ、臍帯遺残構造(臍動脈、臍静脈、尿膜管)の感染が合併してい…

分娩②

ちょっと大変なお産があった。 初産でどうも分娩がすすんでいかない、産道から何かがでているとの農家さんの話だった。 いってみて産道からでているもの、これが子牛の尻尾だった。 えーーーーって思う。 なぜかというと、ちょっと大変なお産のひとつだから…

乳房炎①

乳房炎は牛の主な病気の一つだ。 ほかの動物では聞きなれないこの病気、もちろん人間でも。 何で牛ではしょっちゅう起こるのか? それは牛の乳房にものすごく負担がかかるようにした人間の勝手の結果だ。 もともと牛のミルクも子牛にあげる分だけでればよか…

肺炎②

細菌性肺炎の主な菌は Pasteurella multocida(-) Pasteurella haemolytica(-) Haemophilus somnus(-) Trueperella pyogenes(+) Fusobacterium necrophorum(-) Mycobacterium bovis(+) である。 (+)(-)というのはグラム陰性・陽性か…

肺炎①

肺炎は子牛でよくおこる。 0.5~3か月くらいで起こることが多いイメージだが、その先も、もちろん親牛でも起こる。呼吸が早くなり、熱を伴うことが多い。子牛の平熱は38.5~39.5℃程度だが、41℃を超えるものもいるし、42℃超えたものもこれまで何頭もいた。 群…

乳熱①

乳熱とは分娩前後に起こる低Ca血症のことである。 これはよく起こる。経産牛の分娩後なら取り合えずCa打っとこうかなと思うレベル。 初産で起こるのは0.2%程でほぼないし私は初産牛にCa打ったことがない。経産で多く、特に6産以降なら約10%とされているが…

分娩①

ウシの分娩はとても大事。 なぜなら牛が生を受け大きく育っていくうえで最大の関門ともいえるからである。 農家さんにとっても分娩はとても大事。特に和牛農家さん。 ウシの妊娠期間は約280日。妊娠するまでの期間も入れると、子牛が生まれるまでに 早くても…

子牛のへそ②

前に子牛のへその話をした続編。 へそが腫れたときにまず考えるのは、おなかの筋肉に穴が開いた状態のヘルニアがあるかどうか。 もしヘルニアがあった場合、腹腔内にあるはずの腸がへそのふくらみのなかに落ちた状態になっているかもしれない。へその腫れの…

牛の去勢

今日は牛の去勢をした。 獣医は5-6か月くらいの和牛の去勢をすることが多く、ホルスタイン♂の去勢は農家さんや農協さんが行うことが多い。 去勢は、まずキシラジンを静脈注射して鎮静・鎮痛をかける。牛が起立維持できなくなり座ったら両足を縛って横倒しの…

子牛のへそ①

子牛のへそが腫れていることがある。 今日診た生まれて4か月くらいたった牛は、へそが20㎝×15㎝くらい大きく腫れていた。 もともと子牛はお母さんのおなかにいたときにへその緒とつながって、栄養をもらいながら育っていく。臍動脈、臍静脈、尿膜管の3つがつ…

初めまして。

北海道で牛の獣医をしています。 日々の出来事や思ったこと、日常を書いていきたいと思います。