乳房炎③
前回は高張食塩水により毒素を外に出す話だったが、次は抗生剤と消炎剤。
大腸菌はグラム陰性菌なのでそれに効く抗生剤と、ショック状態・乳房炎の炎症を抑えるためにステロイドやNSAIDsを投与します。
抗生剤は、例えばカナマイシンというグラム陰性に効く抗生剤やOTCというグラム陰性にも陽性にも効く薬があるが、これは作用が大きく異る。
それはカナマイシンは「殺菌作用」であり、OTCは「静菌作用」だからだ。
前回言ったように、この大腸菌のショックは「大腸菌が破壊されたときに出る毒素」により起こる。大腸菌そのものの悪さでは起こらないのだ。
カナマイシンは「殺菌作用」で菌を破壊することによる抗生剤のため、この毒素をさらに増やしてしまう可能性がある。そのため、菌を破壊しない「静菌作用」抗生剤のOTCのほうが無難であるとの考えもある。そこは獣医の判断だ。
ショック状態を和らげるために、ステロイド剤はとても重要だ。
デキサメサゾンにより強力な作用が期待できる。
ただし、お腹に胎児がいるときは使用できない。分娩促進してしまい、流産をひきおこすからだ。胎齢100日を超えると怖い。私は60日位でも使わない。30日位なら使うが。
NSAIDsは流産の恐れがなく強い消炎作用が期待できる。
自分の体感では、良くなる牛はたいてい2-3診目には良くなっている。
逆にそれを超えるとかなり予後が悪い。