分娩②

ちょっと大変なお産があった。

初産でどうも分娩がすすんでいかない、産道から何かがでているとの農家さんの話だった。

いってみて産道からでているもの、これが子牛の尻尾だった。

えーーーーって思う。

なぜかというと、ちょっと大変なお産のひとつだからです。

正常に子牛が出産する体位というのは下の図なのだが、【Ａ】頭位上胎向・つまり頭からきて、背骨が上を向いていて、両前足がまっすぐ伸びている状態か、【Ｂ】尾位上胎向・つまりお尻のほうからきているいわば”逆子”で、背骨が上を向いていて、両後足が伸びている状態です。

この二つ以外は胎児失位と言って異常な胎児の状態であり人の介助が必要である。

（厳密にいうと【Ｂ】逆子も胎児失位である。また、子牛がとても小さい場合は、体位を直すことなく出ることもある）

今回だが、上の図と写真を見比べてその異常さがわかると思う。

【Ｂ】の状態で両後ろ足が子宮の中で頭のほうにピンと伸びてしまっていて尻尾しかでてないのだ。エビのような姿勢なのでこれをエビ子とか言ったりもする。

　　　　　

体感的には後ろ足がこれよりもっと前に伸びてる感じがします。

エビコは双子が多く、分娩予定の２週間前だったりすることが多いのだが、それだ双子のためと子牛のサイズ小さく割と簡単に直ることも。ただ、今回は手を入れて確信。これは双子の大きさではない。１頭のみだ。

ここで少しため息が。この”エビ”の状態から両後ろ足を後ろの方にもってきて【Ｂ】の状態にしないと産道の広さと胎児の幅の関係で出せないのだが、子牛が大きいとこの足を直すのが大変なのだ。

子宮を広げる薬を打ったり、牛を吊って胎児を前方に動かして中のスペースを作り、台に乗って必死に頑張りなんとか下のように両後ろ足を伸ばすことができました。

これで正常な【Ｂ】の状態になったので、あとは慎重に引っ張るのみ。

帝王切開少しが頭をよぎったが、出せてよかったです。