繁殖②
精子が子宮の中に侵入することはかんたんである。
牛であれば人工授精によりその状態がつくられる。
自然界であれば、交尾により膣内に射精され、精子が頑張って膣内へと移動する。
授精が大変なのは、精子が子宮に到達したときに卵子が存在しないかもしれないというところだ。
精子にしてみれば、せっかく頑張ってフルマラソンを走ったのに、42.195km地点にゴールがなかったようなものだ。過酷なフルマラソンの先に人生があると思いすべてをかけて走りきった先に、命を絶たれる無念さ。
牛の場合、精子の寿命(授精可能な時間)は1日~2日ほど。
それに対し、卵子の寿命(受胎能力がある時間)は半日~1日ほど。
また、牛の繁殖周期は21日。つまり21日に1回排卵をする、つまり卵巣から卵子が排出されるということ。
もし精子の寿命を2日、卵子の寿命を1日と考えると、何も考えずにランダムで人工授精すると、授精はかなり低い可能性であるとわかる。
たとえば1/1~1/22の間の1日のみ「ホテル子宮 101号室」に卵子ちゃんが現れるとする。それに対し、卵子ちゃんに会いたい精子くんは、1/1~1/22のうちの連続2日のみしか101号室にいることができない。卵子ちゃんの予定のリサーチなど、綿密な予想も何もなくなんとなく2日間を決めて部屋にいただけで、はたして会うことはできるだろうか?
それは難しい。
しかしこれでは困る。
農家さんとしては、できれば1発で会ってほしいのだ。
どうしたらいいのか。